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監査の簡素化には断固反対

 現在、保育園等には年に1回以上の実地指導検査が入ることになっている。その根拠は、児童福祉法施行令第38条及び第35条の4に定められている。ところが、今年4月1日から同施行令が改正され「実地」の要件が削除されようとしていており、現在パブリックコメントが実施されている。私は、この改正には以下の理由により断固反対の立場である。

第1 現場に赴くことに意味がある

 私はコロナ禍まで多いときで年間10回程度、行政指導監査に立ち会ってきた。その中で、現場でしか分からないことが数多くあることを実体験してきた。監査は、自治体にもよるが数か月前の集団指導から始まり、1か月前の書面提出(事前調査)があり、当日を迎えることになる。そこで、事前の書面だけの状態では表面化していなかったことが、実地検査当日に検査係との質疑応答の中で現れる場面を何度も見ているのである。また、監査には通常保育実践のベテラン(公立保育所で長年施設長を務めた者等)が同行しており、保育の状況に対しても指摘する。

 例えば、私は8年この仕事をしているが、顧問契約を締結する時点で必ず保育時間内に施設を見学させて頂いている。理由は子どもの姿を見ることで、その施設が抱えている課題が漠然と浮かび上がってくることもあるからだ。保育の素人の私でさえ現場に入ることでいろいろと感じることがあるが、保育のベテランの場合はその比ではないであろう。この事例からも、現場にこそ課題がある訳で、指導監督する立場の行政機関がそれを怠ることは考えられない話である。

第2 現に守ってこなかった自治体にお墨付きを与えることになる

 普段保育に関係していない人からしたら信じられない話かもしれないが、年に1回の実地指導検査は、うちの顧問先がある自治体だけで見ても、8割程度しか実施していなかったのが現状だ。(2年に1回実施等、法令を守っていない場合はカウントしない。)それもコロナ禍前の話で、令和2年度以降は1割程度である。理由はどうあれ、政令で定められている義務を履行していない自治体がある上で今回の改正を行うことは、まるで守ってこなかった自治体に合わせることで法令違反の常態を無くそうとしていると思われても仕方ないのではないか。

第3 企業に対するけん制効果がある

 平成27年に施行された子ども・子育て支援新制度により誕生した小規模保育事業は、少ない投資で開設することができることから、株式会社の参入が相次いだ。株式会社は営利目的の企業であるため、利益を追求するために徹底的にコストカットを行う。そのこと自体は企業の存在意義からも当然のことだが、そもそも児童福祉の理念が薄い経営者は、安易に質を落とす方向に進みがちだ。現に顧問先に限らず、様々な会社から相談を受ける際「この程度なら監査で引っかからないか?」という質問が非常に多いことからも、企業が行政指導監査をいかに恐れているかが伺える。倫理的な話にはなるが、書面では解釈の仕方等でグレー化できても、現場では誤魔化せないことは山ほどあるのだ。例えば職員に対する抜き打ち面接がいい例だ。このことからも、児童福祉の理念を掲げずに参入してきた企業に対するけん制効果を併せ持った行政指導監査は簡素化すべきでないのは明らかである。

第4 改正理由が時限的な問題である

 この改正の理由として「新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止」とあげられているが、コロナ禍を理由として恒久的に簡素化させる(実地を要件から外す)というのは筋が通らないのは明らかだ。現に、令和2年度以降多くの自治体が実地を見送っているのが現状だが、そのこと自体はやむを得ないと思っている。真に感染拡大防止が目的であるのなら、コロナが収束するまでの時限措置とすべきであろう。

 

 以上であるが、保育の質の維持・向上の観点から監査は安易に簡素化すべきではない。いわゆる認可保育園は、運営費のほとんどが消費税を主な財源とする公金で賄われているため、全国民にとって他人事ではないのである。賛同頂ける方には、是非パブリックコメントにご自身の意見を寄せて頂きたい。

行政書士 寺島朋弥

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2022年1月10日11:46 PM0件のコメント