幼保無償化について
今年の10月から3歳以上の幼稚園や保育園の利用料が原則無償化されるという話が以前から出ていましたが、本日、子ども・子育て支援法の改正案が閣議決定されました。
待機児童が多い0~2歳児については、住民税非課税世帯のみ無償化対象で、通常の共働き世帯は基本的には無償化の対象にはなりません。そもそも認可園に関しては、住民税非課税世帯は現在も無料だったりするのですが、今回の無償化で給食費が別扱いとなり、かえって負担が増えるのではという懸念が生じています。
しかし、例えば両親ともに大手企業の従業員等で、育児休業をまともに取得できる環境であれば、現在は2歳まで育児休業が取れる(育休手当が支給される)ため、そういう世帯にとっては一定の効果がある訳で、多少は評価できます。ただし、そのような家庭はごく一部で、特に男性が育児休業を取るのが難しい日本社会においては、どこまで実効性があるのか疑問が残るのも事実です。
そして何より本日の閣議決定を受けて、私なりに疑問に感じることが2点あります。
一つ目は「企業主導型保育」という“認可外保育施設”が、認可保育所や認定こども園と同列に扱われている点です。私の業務は、いわゆる認可保育園(大型保育園はもとより、自治体認可の小規模保育事業等含む。)とのお付き合いが多いこともあり、企業主導型を含む認可外保育施設の「質」に常々懸念を抱いています。
おおざっぱに言えば、認可外保育施設は、保育士有資格者の数が認可園に比べて少なくてもいいのです。(小規模B,C型等特殊な認可事業は除く。)「保育士」は保育の技術はもちろん、児童福祉に関する法令も習得した立派な国家資格者です。当然、資格があれば皆素晴らしいのかと言えば、そうとは限らないですが、国として能力を認めて資格を与えている以上、制度上尊重して欲しいものです。
二つ目の懸念は、認可外保育施設を利用する場合も、保育の必要性があると認定(2号認定)されている世帯に限り、3万7千円まで補助される制度で、経過措置として5年間は「認可外の最低基準(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号))を満たしていなくても良い」という点です。この基準は、本当に最低限であり、例えば保育室の面積は、1歳以上の子ども一人あたり1.65平方メートルという極めて狭いもので、実際このような環境であるのであれば自らの子を預けようなんて思えないレベルです。当然面積だけでなく、「二方向避難」等、マンション等ではなかなか難しい基準もあるにはあるのですが、それにしても国が定めた最低基準すら当面(しかも5年も!)は守らなくても税金が投入されることに大変驚いています。
これらの点に関しては、保育園のことを厳しく監視している全国規模の保護者団体がマスコミに対して懸念表明してくれると思いますが、私も保育行政と事業者の仲立ちをしている立場上、放っておけない問題と思い、長々と書いてしまいました。
この問題に関しては引き続き、様々な観点から研究を続けていこうと思います。
行政書士 寺島朋弥
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